FC2ブログ

2014-10-19

「・・・立身石てふ巌窟あり 此に在って凡そ一ヶ月 次に場所をかいて一ヶ月・・・(次の場所は北斗石と伝うる人もあり決して確ならず)」(田中木叉著『日本の光(弁栄上人伝)』)


   DSC04289.jpg

田中木叉著『日本の光(弁栄上人伝)』)
山本幹夫著『辨栄聖者の人格と宗教』により、

弁栄聖者の筑波山上における修行場所が、
「立身石」、次いで、 「北斗石」であると、ほぼ云えるかと思われます。

   DSC03860.jpg

ところが、
実際に「北斗石」に行って感じられたことは、
ここ「北斗石」だけでの1ヶ月の御修行となりますと、
幾つかの点で、疑問をいだかざるをえず、

「立身石での御修行の後、北斗石、その他の場所で御修行をされた」

と考える方がより実態に近いのではないか、と推定しました。

では、「北斗石」の後は、一体何処か?

弁栄聖者の筑波山上での御修行関連の資料を調べていたところ、

「立身石」の次の御修行先は、「行者窟」である。

との言い伝えがあることがわかりました。

また、
大正12年5月発行の本間榮吉著『辨榮上人と当麻山』に、
興味深い記述がありました。

本間氏が、弁栄聖者の御事蹟を尋ねるべく千葉県を訪れた時、
松戸駅から五香の善光寺へ行くために乗った人力車の老車夫が、
弁栄聖者を乗せられたことがあった、という。

そこで、本間氏は、筑波山のことなどを尋ねたところ、
その車夫は、

「曾て、筑波山の行者岩窟も見たり、そこの福餅なども食べたことを細々と話してくれた」。

「行者岩窟」!

これかもしれない、と興奮する気持ちを抑えながら、

早速ネットで調べたところ、
残念ながら、そのものズバリの場所は特定できませんでしたが、
「それらしい場所」が見付かったので、
その調査のため、再び筑波山へ向かいました。

ちなみに、本間榮吉著『辨榮上人と当麻山』は、
「国会図書館内限定」ではありますが、
「国会図書館デジタルコレクション」で、閲覧可能。

  075.jpg  072.jpg

最近、「紫峰杉」が新名所となっているようで、
この辺りは、「男女(みなの)川源流」でもあるようです。

    070.jpg

「それらしい場所」とは、ちょうどこの下の位置にあたる所。

 DSC03772.jpg  DSC04141.jpg   
 
ケーブルカーの到着駅である「筑波山頂」駅を出て、
すぐ左の登山道(御幸ヶ原コース)を下って行きます。

この「御幸ヶ原コース」は、下山道といえども、なかなか険しく、
やはりこちらも、足腰の不調な方には、残念ながら、お勧めできません。

   DSC04117.jpg

10数分ほど、下って行きますと・・・

先ほどの、「紫峰杉」「男女(みなの)川源流」のちょうど下の方。

   DSC04115.jpg  DSC04118.jpg

       DSC04116.jpg

雰囲気は申し分なく、しかも、「湧水」が・・・

 DSC04091.jpg  DSC04092.jpg 

       DSC04103.jpg

       DSC04106.jpg

「役公之窟」

そう、「修験道」の開祖
あの「役行者 役小角(エンノオヅヌ」が修行した岩窟。

ただし、岩窟の内での修行となると、空間が狭すぎるような・・・

      DSC04105.jpg

「それらしい場所」がないか、近辺を探索してみると・・・

少し左へ進んだ(戻った)、上方に・・・

      DSC04043.jpg
    
      DSC04137.jpg

此処なら、岩窟の空間が少々狭いけれど、
登山道から脇に少しそれているし、
近くには、湧水があるし、
念仏修行に適しているように思われました。

「結界」!

という言葉が、すぐに思い浮かぶ、
一種独特の雰囲気が、辺り一帯に漂っていました。

岩窟の中の写真を撮るのは躊躇しましたが、
頭を下げて、撮らせていただきました。

      DSC04131.jpg

幾つかの条件から、此処での御修行は、十分に考えられると思われ、
「修験道」関係の資料を中心に調べたところ、
とても興味深い本に出遭いました。

宮本宣一著『筑波歴史散歩』

初刊が昭和43年、再刊が55年発行の本で
最近までしばらく品切れ状態となっていましたが、
真に幸運なことに、ごく最近、平成26年4月に再々刊されました。

この本には、「筑波山禅定」(今は、「筑波山神窟講社」といわれている)
の修行地(六十六ヶ所)の順序と解説が載っています。

この本によると、

「役公之窟」の一帯は、
「第三番 行者のイワヤ」「第四番 不動のイワヤ」があり、
ここはもとは、「みなの川不動尊」といわれた。

不動尊の石仏もあり、「おこもり所」もあって、行者たちがこもっていた

慶応2年7月3日の大雨で、すべて流されてしまい、
大杉ならびにモミの木など数十本、ここにあった茶屋まで全部、
みなの川へおし流されてしまった。

と、貴重な記述があります。

「第十六番 ミウミのイワヤ」、「第十八番 立身石」、「第三十四 北斗石」
となっています。

「はじめ筑波山においては、
阿弥陀仏の四十八願に因み、四十八ヶ所の禅定窟をつくったが、
のちには法華経六十六部に因んで六十六ヶ所として現在に及んでいる。
そのなかには不動のイワヤ、イナリのイワヤなど十大禅窟というものもある」と。


また、本間氏を乗せた人力車の老車夫が、

「曾て、筑波山の行者岩窟も見たり、そこの福餅なども食べたことを細々と話してくれた。」

と、本間榮吉著『辨榮上人と当麻山』に記述されている箇所がとても気になり、

「福餅」

についても調べたところ、

現在のケーブルカーの終着駅前の広場辺りにあった、
「五軒茶屋」
で売っていた名物に、「夫婦餅」があったとのこと。

そうすると、「筑波山の行者岩窟」とは、
「立身石岩窟」と考える方が、よさそうに思われてきました・・・

ただし、「行者窟」とは、「イワヤ」であると思われるので、

「役公之窟」辺りのイワヤである可能性は、
まだ否定しきれないように思われます。

今回の一連の調査からの結論は、次のとおりです。

「弁栄聖者の筑波山上での御修行地として、確実に云えることは『立身石』、
その他には、『北斗石』の可能性が高く、その他『行者、不動のイワヤ』などの『イワヤ』が考えられる。」



なお、聖者は、山での修行を全ての人に、勧めていたわけではなく、

「形よりは、精神上の要意が肝要にて候」

との、たよりもあります。


今回の一連の記事を終えるにあたり、ご参考までに、
弁栄聖者の筑波山上での御修行に関する記述を記しておきます。


「常陸国筑波山麓より一里ばかりか山頂より二丁許南の方に
立身石てふ巌窟あり 此に在って凡そ一ヶ月 次に場所をかいて一ヶ月
身に纏ふ所は半素絹 食物は米麦そば粉などにて」
(次の場所は北斗石と伝うる人もあり決して確ならず)

(~田中木叉著『日本の光(弁栄上人伝)』)


「女体山中でふと巡り合った真言宗の行者、
その母堂故水島キヌエ氏が弁栄聖者の信者で、
聖者から、筑波山上での修行体験内容の有難さを聞いて、
自らも筑波山上で数回も修行された程の関係があり、
『弁栄聖者は、立身石から女体山の北斗石の方へ移られた』
と、母堂から聞かされていた。」

(~山本幹夫著『辨栄聖者の人格と宗教』)


「その夏筑波山入山、立身・北斗両石上各一ヶ月の三昧証入となり」
(~山本空外編著『辨栄上人書簡集』)


「苦修錬行の終わった八月の末、
聖者はただちにその足で心本尊をお迎えすべく筑波山へ赴き、
ここに二ヶ間、念仏三昧の人となった。
・・・その行場は一ヵ所ではなく、点々とうつり代わったようで、
・・・この間の修行ぶりは正確に知るよしもないが、・・・」

(~藤堂恭俊著『辨榮聖者』)


最後に改めて、やはり、是非触れておきたいことがあります。

(筑波山上における弁栄聖者の三昧発得偈)

   DSC03791.jpg

 「弥陀身心遍法界 衆生念仏仏還念
 一心専念能所亡 果満覚王独了々」



「この宗教体験は、かれの東京遊学以来の一つの総決算であるとともに、
またそれ以降の生涯を貫く宗教活動の出発点ともなり、
またその土台ともなるものであったのである。」( 河波昌 「山崎弁栄ー光明主義の聖者ー」)
(脇本平也・河波昌共著『浄土仏教の思想 第十四巻 清沢満之 山崎弁栄』)

関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 宗教・信仰
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

RSSリンクの表示
検索フォーム
カレンダー
09 | 2018/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
アクセスカウンター
プロフィール

syou_en

Author:syou_en
山崎弁栄(べんねい)聖者(1859~1920)に出遇って初めて、各宗派宗教で説かれている教義、宗教体験が、腑に落ちました。

比較宗教、比較思想に一貫して関心を持ち続けています。

宗教には関心はあるけど、特定の宗派に凝ることには躊躇する。
そういう方も結構いらっしゃるかと思います。

そのような方は是非、弁栄聖者にふれてみてください。


(注)ツイッター(@syou_en)もあります。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
twitter
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR