2018-01-18
愛媛県松山市「大林寺」、”松山光明会育ての母” 垣本都夫人と笹本戒浄上人
弁栄聖者は、ご婦人の役割を重要視されていたようです。
光明会を裏で支えた存在として、
ご婦人方の役割を決して忘れてはならないと思います。

【垣本都夫人 昭和56年8月往生 世寿93歳】
(写真は昭和56年春 「弁栄上人展」の際)
愛媛県松山市「大林寺」における「松山光明会」の発展は、
”松山光明会育ての母”ともいうべき垣本都夫人
の存在抜きには考えられないように思われます。
垣本夫人のお写真を拝見した時、
評論家の小林秀雄氏の晩年の姿が連想されました。
”女丈夫”ともいうべき内面を感受したのかもしれません。
垣本夫人には、
”人に親切な慈悲深い”面もあったようですが、
その活動を支えた”背筋がシャンとした”姿勢は、
生涯貫かれていたように思われます。
この写真撮影時のエピソードとして、
松山光明会にご縁の深かった山本空外上人は、
「垣本さんは紋服(大林寺ゆかりの久松元殿様より頂いたものと聞く)
を着て堂々としておられたが、
あれは皆気がつかなかったけれど、
お別れのご挨拶だったのですよ」
と話しておられたようです。
また、
光明会の歴史上、重要な役割を果たされたご婦人が幾人もおられますが、
「松山光明会」の垣本都夫人のことを考えます時、
何故か、東京「一行院」にあった「東京光明会」の、
中井とき夫人のことが思い出されます。
東京「一行院」とは、
徳本行者往生の地であり、
中井とき夫人は、
弁栄聖者の在家の弟子、中井常次郎氏(弁常居士)の義理の妹。
垣本都夫人の逸話も大変示唆に富み、また、大変興味深いので、
是非ご紹介したいと思います。
垣本都夫人は、在家でありましたが、
最初に如来様におめにかかった時に、
「如来様の御顔がぼぉーとしてはっきりと拝めませんでした」。
そのことを笹本戒浄上人にご報告しますと、
「如来様をお慕いする気持ち(情)が足りないからである。」
とお叱りを受けたそうです。(杉田善孝上人談)
また、
「垣本さん、人間はいつも頭に落雷があっても、
魂に怪我をしないだけのお念仏をしておらなければなりません。
それでないと人生に行き詰ることがあります」と。
垣本夫人は、更に如来様の霊育を受けられ、
後に、慧眼と法眼が開かれたそうです。
学生たちが笹本戒浄上人のみ教えを聞きかじり、
「見仏、見仏」と騒いでいると、
「真の見仏とは、そんなちっぽけなものではない。
大宇宙の真精神をくみとり、
それがその人の人格と生活とに現われ出る
ようなものでなければならない。」と。
「見仏」による心身の霊化(仏化)、
その甚深なる真の意義を認識されていた実体験者、
垣本都夫人による極めて重要なご訓戒。

【昭和12年3月 松山大林寺における
笹本戒浄上人最後のお別時】
垣本都夫人は、笹本戒浄上人を大変尊崇されていたようですが、
また、戒浄上人とのご縁も深かったようです。

【笹本戒浄上人(64歳) 昭和12年3月 松山大林寺】
(戒浄上人)「この度が最後のお別れで御座います。
御体に気をつけて主義をよろしく」
(垣本夫人)「必ず年に一度は御指導下さるお約束でしたがー」
(戒浄上人)「ハイ、今回で如来様の思召しは無いと存じます・・・」
同年、昭和12年(1937年)7月26日、
笹本戒浄上人、ご遷化。
翌日、7月27日早朝。
大嶋玄瑞上人が、戒浄上人ご遷化の電報をもって、
垣本夫人の部屋に駆けつけ報告する前に、夫人から一言、
「笹本上人が亡くなられましたね。」
また、
戒浄上人ご遷化後、
日夜真に残念に思い、力を落とされていた或る夜の夢に、
戒浄上人がお膝を進められて、
「宇宙間の一切を尽くしても「念弥陀三昧」にはかなわないのですから、
勇気を鼓して至心にお念仏なさいませ」と。
目覚めたら、丁度百ヶ日でした。
前々回、同松山市内の「浄福寺」にある、
弁栄聖者と笹本戒浄上人、田中木叉上人の三基の舎利塔
のことを記事にしましたが、
戒浄上人のご長男の浄光師が分骨を松山に持ってこられました。
戒浄上人のご遺言として、
「戒浄上人のお衣と威儀細」を垣本夫人に渡すように
と記されていたそうです。
「松山光明会」には、
「光明主義の六大特長」を択出された大嶋玄瑞上人、
笹本戒浄上人の直弟子中、「記主」ともいうべき泉虎一氏、
笹本戒浄上人の薫陶を受けられた垣本都夫人がおられました。
「松山光明会」が果された意義として、
光明主義教学上、また、浄土宗(乗)との関係上避けては通れぬ
「念仏の択法」
の最重要課題がありますが、
このことについては、また項を改めて考察したいと思います。
最後に、笹本戒浄上人の垣本都夫人(また我々)へのご教示。
「一心にお念仏しておれば、
三代生れ変る間に必ず親様のお世継になれます。
これは事実でございます。
私は決してうそは申しません。」
スポンサーサイト