2014-08-31

「急がねば日がくるる、あせると足が地につかぬ。」(田中木叉著『日本の光(弁栄上人伝)』)

弁栄聖者晩年口にされていた、随行者への警句。

読む度に、身が引き締まる思いを新たにします。

若い頃は、理想への性急さがあり、
歳を経る毎に、世間の忙しさにかまけ、いつの間にか懈怠心が生じており、
実際には、実践してみると、
「このコツを掴む」のは、なかなか難しいと実感します。

このことに関して、是非記しておきたいと思っていたのが、
「筑紫の聖者」と敬愛された中川察道上人の杉田善孝上人へのご説法、
その杉田上人の想い出話しです。

まだ若かりし杉田青年に、
九州の自坊へ伝道に来るようにと、察道上人はお誘いになったことがあったとのこと。

その当時既に、中川察道上人は、三昧をいただかれ慧眼と法眼が開けており、

「自分の体を触るのと汽車の窓を触るのと同じ感じだ。」

と身近の方に語られていたほどの御方。

恐縮のあまり即座に断る杉田青年に、
察道上人は、「思い切っていらっしゃい」とお誘いくだり、
それ以上は断りきれず、杉田青年は察道上人のお寺へ行かれました。

ところが、そんなご境涯の御方、察道上人のお寺に到着しましたが、
杉田青年のガチガチに緊張していた様子を察し、

察道上人は、杉田青年の傍でごろんと横になって、

「長旅で疲れたでしょう。あなたも、遠慮しないで、寝ころぶとよい。」

と言われ、次の言葉を続けられました。

「弁栄上人の一切の行為を知ってその真似をしようと思っても、
一朝一夕にできるものではない。
だんだんお育てを頂いて、段々と近づいていく。
難思光、無称光、超日月光と徐々にお育てを頂いた暁に、
ようやくあのようになることができるのだ。
だから、無理をすることはない」と。


理想に燃え、熱心な青年に特有の性急さによる、
「修行と理想のギャップに苦しむ」青年僧への、
先輩からの、実にお慈悲に富んだご説法で、
とても感銘深く、記憶に残っています。

中川察道上人という方は、
光明主義を勉強されている方でもご存じない方もいらっしゃるようですので、
この機会に是非知っていただきたく、逸話をご紹介します。

弁栄聖者の御法話を聞かれた察道上人は、
「三昧入神」について疑問をいだき、聖者にお尋ねになりました。

察道上人:「私のようなものも三昧に入る事が出来ましょうか」
弁栄聖者:「出来ます」
察道上人:「それではどの位の時日を要することでありましょうか」
弁栄聖者:「三日間かかります」

この聖者の御言葉に吃驚された察道上人のご様子を察し、

弁栄聖者:「けれどもそれはあなたのみに言うことで、一般にはそんな事を勧めるものではない」

と念を押されたようです。

かくいう、大変機根のよかった御方で、
後に、とても素晴らしい書と歌を残されています。

ここで、興味深いことの一つは、
中川察道上人自身にさえ自覚できていなかったことが、
弁栄聖者には「御見通し」であったことです。

もちろん、弁栄聖者の「大円鏡智と妙観察智」による衆生済度の姿です。

中川察道上人の弁栄聖者の印象(直観)は、

「(十二光の御法話は)分からないまでも何となく尊く感ぜられ、
じっと御顔を拝する度に、
いつもこのお方は善導大師の御再来であるなという様な感じがして、
解らないが有難くて一週間のご講話を承わりました。」

弁栄聖者を「法然上人の再来」と思われる方は多いかと思われますが、
察道上人は「善導大師の御再来」と直観されておられているところが、
大変興味深く思われます。

まだまだ研究途上ですが、
弁栄聖者の修行実践は、
法然上人が「偏依善導」と仰がれた「三昧発得の聖者」善導大師の方に、むしろ直結していると、
思えてきているからです。

なお、これらの逸話は、『辨栄上人の思い出』(山崎辨戒編集兼発行 霊鷲山 善光寺発 非売品)によっています。


現代という時代に生きる私達は、
「努力と成果」という短絡的な因果関係で事物を捉え、
「性急な成果を求める志向」が根深くあり、

宗教の世界へも「自然因果律(関係)」を適用し考えようとしてしまいがちですが、
どうも、「心霊(宗教)因果律」は、そう単純ではないように思われます。

いわゆる、意識的な修行の努力の成果が、
比較的時間を置かずに、直ぐに目に見える形で、
「因果関係を明確に意識できる形で現れる」とは限らない、
そこが科学的な因果関係(自然因果律)に馴染んだ私達が戸惑うところかと思われます。

「急がねば日がくるる、あせると足が地につかぬ。」(田中木叉著『日本の光(弁栄上人伝)』)
スポンサーサイト

テーマ : 宗教・信仰
ジャンル : 学問・文化・芸術

RSSリンクの表示
検索フォーム
カレンダー
06 | 2014/08 | 09
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
アクセスカウンター
プロフィール

syou_en

Author:syou_en
山崎弁栄(べんねい)聖者(1859~1920)に出遇って初めて、各宗派宗教で説かれている教義、宗教体験が、腑に落ちました。

比較宗教、比較思想に一貫して関心を持ち続けています。

宗教には関心はあるけど、特定の宗派に凝ることには躊躇する。
そういう方も結構いらっしゃるかと思います。

そのような方は是非、弁栄聖者にふれてみてください。


(注)ツイッター(@syou_en)もあります。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
twitter
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR