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2012-03-24

町田宗鳳著『法然・愚に還る喜び 死を超えて生きる』を読む

前回、松岡正剛著『法然の編集力』との出会いを、
町田宗鳳氏とのありがたい縁であったとして、記事を書きました

今回ご紹介する本は、NHK教育テレビ番組「こころの時代」、
ガイドブック「こころの時代『法然を語る』(上・下)」が、
元になっているとのことです。

この本は、ソフトカバーかつ値段も1,260円、
2010年11月の最近の刊行ということで、
町田氏の思想的円熟さを感じます。


私が町田宗鳳氏の法然上人理解の着眼点に最も敬意をいだくのは次の一貫した観点、

「法然を語る人の多くは、
念仏信仰の普及者としての「表」の法然しか見ていません。
彼の実力は、念仏の「裏」にあったのです。
「裏」とは深い宗教体験のことですが、
それこそが法然をして「思想の革命家」ならしめたのです。」


もしも町田氏が普通の学者、法然研究者なら、
このような物言いはしないはずと思います。

町田氏が法然理解に戸惑う難点は、

「法然理解の困難さは、法然の二面性にある」。

と一貫して認識されています。

一見すると、俗に言う

「言ってることとやっていることが異なっている」。

文献学的研究からは、そう言わざるをえない点がある、ということです。

しかも、思いますに、
その点こそが、決定的に法然上人の真髄理解に関わる大問題なのです。

文献学(表)的には、法然上人の一貫した主張は、

「ただ一向に念仏すべし」。

つまり、口称念仏です。

ところが、法然上人には脈脈と流れる深い宗教体験(裏)の世界があります。

裏の世界は霊性豊かな、

口称念仏→(見仏想に住する)憶念口称念仏→見仏三昧

の宗教体験の世界です。

ちなみに、「憶念」とは、お慕い申し、御念じ申すことで、
理知的意志的な「観仏」とは違い、
プラント的な霊的な情的発露です。


これらの観点から、法然上人の御道詠に着眼され
論じられている稀有で異色な法然研究書が、

山崎弁栄述『宗祖の皮髄』。


町田氏の炯眼は、法然上人の次の重要な二点に着眼されています。

〇「声名」、御名を称えること。声、発生という肉体性に着目。

〇「見仏三昧」の宗教体験を重要視する。


ここで興味深いのは、弁栄聖者の高弟たちの中でも特徴があり、

前者に対して、一貫してその重要性に着目されたのが、田中木叉上人。
後者をことの他最重要視されたのが、笹本戒浄上人。

であったと私は受け取っています。

この点については、いずれ考察すべき最重要点ですが、
今回はこの事実の指摘にとどめたいと思います。

私が注目し、深く感銘を受けているのが、法然上人の次の発言です。

「師匠の臨終にそなえて、
弟子たちが三尺の高さの阿弥陀像を上人の寝室に持ち込んで、
この仏を拝みになってくださいと言うと、
上人は何もないところを指して
「この仏以外に、どのような仏がおられるというのか」
とお答えになった。」(『御臨終日記』)

「この十年あまり、念仏修行の効果があったのか、
極楽浄土の光景に加えて、仏や菩薩の姿を、常日ごろからご覧になっていた。
しかし、ご本人のお考えで、
他人にはそのようなことを語られなかったので、
師の生前に人々はそのような事実は少しも知らなかった。
本当は真身の仏を幻視されることは、日常化されていた。」(『御臨終日記』)


ただし、「幻視」という訳は、注意を要するように思われます。


「善導大師、法然上人、徳本行者は、三身四智の仏眼を体得されていた。」

ただし、善導大師と法然上人はその内容を文章には明確には著述されず、
徳本行者は、わずかに御歌に残されている。

弁栄聖者が御自身の御内証から、そう言われたと伝えられています。


「また、弟子たちが、臨終にそなえて、
阿弥陀像と上人の指を五色の紐で結ぶことを申し出ると、
上人はそのようなことは一応のしきたりであって、
必ずしも実行する必要はないとおっしゃった。」(『御臨終日記』)


この法然上人の発言を、法然上人の「合理性」と現代流に受け取ってしまっては、
法然上人の真意をくみ取り損なうと思います。

「必ずしも・・・必要はない」という発言に、
法然上人の人間的洞察力の深さ、円熟した宗教家としての奥深さを感じます。

このことは、「必ずしも」を外して、
鎌倉時代のあの戦乱、飢饉、風習などの時代背景を想像しながら、
それらの文章から伝わる感触の差を味わっていただきますと、
宗教家法然上人の真面目が伝わるように思われます。


この町田宗鳳著『法然・愚に還る喜び 死を超えて生きる』には、
上述の観点の他、
親鸞聖人、道元禅師、日蓮聖人、明恵上人、ユング心理学の能動的想像法、
法然上人の両性具有性、法然上人と女性との関係・・・
などからの考察も盛り込まれ、知的好奇心も刺激します。


法然上人を知る格好の入門書としてお勧めする次第です。


なお、町田宗鳳ホームページはこちらです。
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Author:syou_en
山崎弁栄(べんねい)聖者(1859~1920)に出遇って初めて、各宗派宗教で説かれている教義、宗教体験が、腑に落ちました。

比較宗教、比較思想に一貫して関心を持ち続けています。

宗教には関心はあるけど、特定の宗派に凝ることには躊躇する。
そういう方も結構いらっしゃるかと思います。

そのような方は是非、弁栄聖者にふれてみてください。


(注)ツイッター(@syou_en)もあります。

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